橋下市長の慰安婦問題発言から見える国民意思を知る重要性

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公務員の心得として、主権者である国民への発信は誤解を招かないようにしなければならない。主権者としての意思決定に必要な論点(=解決すべき問題の所在)を明確にするためである。そのためには、解決案別に長所・短所を根拠を示して提示しなければならない。提示する根拠の信憑性を併せて主権者に提供することを忘れてはならない。ここまでやれて、公務員は職責を果たせたことになる。

今回は、誤解を招かない行政情報の発信方法について、橋下市長の慰安婦問題での発言を題材に考えてみたい。

橋下市長は2013年5月13日の記者会見で、戦争で戦う兵士たちの「休息」のために「慰安婦制度は必要なのは誰だってわかる」と発言した。さらには、沖縄の米軍司令官に米兵の「性的なエネルギーをきちんとコントロールできない」なら、合法的なコントロール方法として「もっと風俗業を活用してほしい」と進言し、性処理のために軍隊が女性を活用することを容認した。この橋本市長の発言主旨は、多くの人の誤解を招いた。これに対する橋本市長の釈明があるとすれば、

「慰安婦問題は、第二次大戦で戦ったすべての国の軍隊で発生した問題で、日本の軍隊に特有の問題ではないという主旨が伝わらず、戦争に慰安婦は必要(=兵士の性処理に女性が必要)だったというフレーズだけが世界中を駆け回ることとなってしまった」

で間違いはないだろう。米軍司令官に対する発言については、「イヤミを言ってしまった。不適切な発言だった」と己の未熟さをひたすら謝罪するしかあるまい。

橋下市長発言の問題点は、慰安婦問題に対する歴史認識を示したかったのか、当時は兵士の性処理に女性が必要という認識を示したかったのかが不明だという点だ。歴史認識を示したかったのだとすると、慰安婦問題で侵害された人権が世界のすべての軍隊が侵害してきた人権と同じものであることを歴史的事実を示して説明する必要がある。そうでなければ、日本の慰安婦問題だけを非難するのはおかしいと発言しても内外の理解は得られない。

一方、当時は兵士の性処理に女性が必要だったという認識を示したかったのであれば、女性の人権侵害に優越するもの、例えば戦力の維持など優越利益の具体的な説明が必要になる。しかし、戦後世代の理解はどう説明しても得られないと容易に想像できるので、昔はともかく現代ではとうてい許されるものではないと発言しても内外の誤解は避けられない。となると、発言するメリット自体からの再構築が必要になるので主旨自体の組み換えを迫られる難しい事後処理(=釈明)となる。

必要悪を話題にする行政的メリットは、必要悪を不要にする場合又は必要悪を活用したい場合

である。橋下市長の発言が波紋を拡げている原因は後者である。国民は、戦争になったら国内外で女性の性の自由が侵害されることを覚悟しなければならないのかと危惧し、米軍基地が大阪市にできたら、性風俗の積極的な利活用を求めて市長が米軍に営業をかけるのではないかと危惧してしまう。そこまで危惧する人々は少数だとしても、市長の人柄を危惧する人々を増やす行政的なメリットが大阪市にあるとは思えない。政党の党首として、慰安婦問題を外交問題として提起したいのであれば、無用の混乱を招いただけの発言を詫びて再提起すべきである。橋下市長の、

国益を自益に優先させる政治姿勢は評価できるが、共感を得られない言動はただの自殺行為

である。今も昔も

票にならない政治課題を認識させつつ、いかに国民の理解と支援を得るのかが政治家の役割

であり、

減点を恐れず現状を改善させていくことが行政に身を置く公僕の役割

である。この役割を果たすために行動すれば、経験値だけで行政情報の発し方はマスターできる。

国民の反応を事前に熟知できれば、最適な手段を常に選べる

からである。ここで重要なのは、

国民の反応は理性だけでなく常に感情に左右される

という点だ。国民感情に直接訴えて理解を得られれば楽だが、

国民感情に逆らう場合には、国民が感情を理性で抑えることのできる説明が必要

だ。従軍慰安婦問題はその好例であり、国民意思を熟知できなければ恐ろしくて提起できない問題でもある。



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